君と奏でる世界は、虹色に輝いている。

「来月末までに候補曲を準備してほしい」

戸惑う私を気にせず、話は続けられる。

「みんな楽しみにしてるからね」

篠崎さんの言葉に、レコーディングスタッフも私に期待の眼差しを向けて頷いている。

「わかりました」

……とは言ったものの。

「…書けない…」

あれから数週間が経った、9月のある日。

今年は例年よりが夏の終わりが早くて、窓の外は本降りの雨。

自分の部屋で、作詞をしているところなんだけど。

“ラブソング”ということを考えると、どうしても曲が浮かんでこない。

好きな人や彼氏がいれば、こんなに悩むこともなく実体験で曲が書けるのかもしれないけど。

残念ながら、現在の私には彼氏どころか好きな人さえいない。

そんな私にラブソングを書けなんて、かなり無理な話だと思うんだけど……。

「はぁ…」

思わずため息をついたその時、近くに置いてあったスマホの着信音が鳴った。

「もしもし?」

「あ、結音ちゃん? 曲作りの方は進んでる?」

電話をかけてきたのは、マネージャーの篠崎さんだった。
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