君と奏でる世界は、虹色に輝いている。
#3
8月に行われる音楽イベントのリハーサルが始まった。
イベント前日、最後のリハーサルは夕方5時から。
全曲を通して演奏し、一段落したところで少し休憩をすることになった。
「…私、飲み物買ってきますね」
鈴原さんがそう言って部屋を出た。
ひとりになった俺は、部屋の隅にあるソファに腰を下ろした。
今日は別件の仕事もあって朝からずっと慌ただしかったから、少し疲れたな。
静かになった部屋でひとり目を閉じると、それまで我慢していた眠気が一気に訪れた。
―――………
「……る……由弦…」
誰か俺の名前を呼んでる…?
今も忘れられない愛しい声。
「……夏音……?」
そっと呟いた声。
でも、そこに夏音はいるはずもなく。
ゆっくりと開けた目に映ったのは、楽器や機材だった。
そうだ、今はリハーサル中だったんだ。
慌ててソファから立ち上がると、ブランケットが床に落ちた。
誰かが持ってきてくれたんだろうか。