君と奏でる世界は、虹色に輝いている。

「あ、目が覚めました?」

不意にそんな言葉が聞こえて慌てて視線を向けると、キーボードの前に鈴原さんが座っていた。

「ごめん、もしかして俺かなり寝てた?」

「ほんの15分くらいですよ。遠坂さんもハードスケジュールでお疲れですよね」

「いや、ホントごめん。……これ、鈴原さんが持ってきてくれたの?」

いくら休憩時間とはいえ、仕事中にうたた寝してしまったうえに、夢まで見てたなんて恥ずかしい。

そんな気恥ずかしさをごまかすように、俺は床に落ちたブランケットを拾って尋ねた。

「あ、はい」

「そっか。ありがとう」

「どういたしまして。でも、なんか親近感わいちゃいました」

「え?」

「遠坂さんって、いつもクールに仕事こなしてる感じだから。眠くなって寝ちゃうこともあるんだなって思って」

「そりゃあ、俺も人間ですから」

「あはは。そうですよね」

そう言ってふたりで思わず顔を見合わせて笑い合った。

一瞬にして和やかな空気が漂う。

「じゃあ、明日に向けてもうひと頑張りしようか」

「はい!」

俺の言葉に鈴原さんが笑顔で頷いて、リハーサルが再開された。
< 97 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop