クールな御曹司の溺愛は初恋妻限定~愛が溢れたのは君のせい~
 有栖川さんは無表情で毒を吐いて、私の腰に手を回した。
「さあ、行こう」
 彼の言葉に静かに頷いてICUを出ると、背が高くて、精悍な顔つきをした男性が立っていた。年は蒼さんと同じ二十八歳くらいで、髪は長めのスポーツ刈り、ダークグレーのスーツを着ている。
 その男性が「お疲れ」とどこか楽しげに声をかけると、有栖川さんが冷ややかに返した。
「お前、全部知ってたな?」
 なんだか親しそう。彼は一体誰?
「文句を言う前に、俺の紹介をしたらどうだ? 彼女がキョトンとしてるぞ」
 謎の男性に指摘され、有栖川さんが私に目を向ける。
「ああ。そうだな。神崎さん、彼は俺の秘書で幼馴染の中西悠馬」
 幼馴染……か。六歳から有栖川さんの婚約者をやっているけど、初めて会ったな。
 まあそれだけ私と彼が希薄な関係だってことなんだろうけど。
「神崎美雪です。はじめまして」
 中西さんの目を見て挨拶すると、彼は笑顔で返した。
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