唇を隠して,それでも君に恋したい。
「変なことに巻き込んじゃってごめんね」
リューが寡黙なのはいつものことなのに,沈黙に耐えきれなかった僕は言う。
「放課後の話,今でもいいか」
「え……? あ,うん」
僕が頷くと,リューは水を止めて,傷の見える口の端を拭った。
「俺は,お前……伊織のことが好きだ。だから別に今回のことも,巻き込まれたとか不快だとか,そんなことはない」
ぇ……
好きって,嫌じゃないって。
それじゃまるで,"そういう意味"みたいじゃないか。
「ちょ,とリュー」
「それから。お前が一番知りたいだろうことだけど……さっきは怖がらせてごめんな。俺にはお前の作用は効かない。俺は,この世で唯一の……S·Pの影響を受けない人間なんだ」
な……
突然のリューからのカミングアウトとの連続に,僕は信じられない思いでリューをみた。
けれど聞き間違えるはずもない,S·Pという単語。
僕たちの存在を示した,呼称。
リューはなにかを知っている。
僕の影響を,受けない……唯一の存在。
「それって」