唇を隠して,それでも君に恋したい。
「すごいな。いっつも最初に気付くもんな伊織は」
「まあね」
敦ばっかり,見てるから。
「俺より先に気付くこともあるし,助かる。荷物もありがとな」
「別に,これくらい」
「その伊織が言うんだから,敦も早く行け,な?」
スズにせかされて,敦は苦笑してから僕たちと別れた。
最後に1つ,お礼のように僕の頭へと大きな手のひらを置いて。
唇を引き絞った今の顔を,スズに見られたらバレてしまう。
このときめいてどうしよもない,下心だらけの心に気付かれてしまう。
それは,とても困る。