唇を隠して,それでも君に恋したい。

ボクと2人,溶け合うキモチ。


「ど,うして」



僕は自分が思っていたよりも衝撃を感じて,乾く喉からありきたりな言葉を吐く。

和寧は困ったように,柔らかく目元を歪めた。



「僕はさ,実はお偉いさんの一人息子でさ。だから伊織のことも知れたんだけど。伊織よりずっと,楽に生きてきたんだと思う」



僕より……同じ,S·Pとして。



「でも,それじゃあ足りなくなったんだ。ずっと心の何処かで,僕と同じ世代のS·Pに会いたいと思ってた。そして叶うのに叶わない恋をして,君を知って,僕はここまで逃げてきたんだ」



じわりと胸の内に溶け込むように,僕の瞳には雫が浮かぶ。

そして,音もなく,つ……と頬へ溢れた。

僕も,同じだ。

ずっとずっと,逢いたいと思ってた。

埋められない穴を埋められるのは,きっと……

そう思ってきた。

S·Pに耐性を持つ人(リュー)でも,片思いの相手()でも,P·B(一般人)でもなくて。

僕と"同じ",S·Pとして生まれたその人に,出逢いたいと思ってた。

言葉にならない嗚咽が,ポタポタと大粒の涙が。

空気に落ちるのを,和寧はどこか嬉しそうに見ていた。
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