噂の絶えない彼に出逢って,私の世界はひっくり返る。
初恋キラーのクズ男。

プロローグ

「~っひどいっ!!! 少しくらいって,そう,思ってたのに……っ」

ーパチッッッ



嫌いなものを同時に2つ見つけて。

私の頭は戸惑いに静まった。

平手を喰らった男はふらりとよろけて,一瞬の怒りを瞳ににじませる。

けれど殊勝な事に,それを相手の女に向けることなく。

下らないとでも言うように嫌そうな顔をした。

はあ,と。

聞こえないはずのため息が耳に届く。



「っ……っ」



慣れない衝撃に痺れるのか,片手を押さえる女は,眉をぎゅっと寄せて,もう目も合わない男を涙目に見つめ続けていた。

気がすんだのか,他になす術もないのか。

女の方だけが悔しそうな顔で2階へと消えていく。

何も学校の,こんな薄暗い階段の踊り場で,こんなことしなくてもいいのに。

嫌悪に震える身体を押さえて,それでも。

私は立ち去ろうとしない男へ,少しずつ歩みを進めた。

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