監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


「72番!」




 私はとっさに72番へ駆け寄って、叩かれていた手の甲にふれる。

「気にせず」と彼にだけ聞こえるようにささやくと、声量をもどして言う。




「作業を再開しなさい」


「せんせー…はーい」




 眉を下げて、ふたたび手をうごかし始めた72番を、ほっとしながら見つめる。

 他のVerbrechen(フェアブレッヒェン)生がこっちを見ていることに気づくと、「あなたたちも」と注意した。




「ふむ…仕事はできるようだな」




 おえらいさんが私を見下ろしながら言う。

 …冷静に、冷静に…怒っちゃダメだよ、私…。




「次の工場へ案内いたします。どうぞ、こちらへ」


「ふむ」




 財前先輩がうながしたことで、おえらいさんは移動を始める。

 私は財前先輩のうしろにもどって、こっそり深呼吸をした。
< 61 / 289 >

この作品をシェア

pagetop