監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


「きゃぁぁっ!」




 思わず悲鳴がもれた口を片手でふさいで、バッとふり向いた。




「ひゃっ、108番!?あなたまた脱走して…!」


「あれから景依(けい)が俺の面倒見にこねぇから、探してたんだよ。こんなとこに1人で、あのお坊ちゃんに干されたか?」




 うっ、顔が近い…!

 私は顔をそむけながら、108番のすねを蹴って拘束から抜け出ようとした。

 そのまえに「おっと」なんて言って108番が離れたけど。




「ちがいます!これも仕事の一環です。Verbrechen(フェアブレッヒェン)はいま刑務作業の時間でしょう、さっさと工場にもどりますよ」




 ちょっと、ほんのすこしだけほっとしながら、108番の胸を押して廊下に押し出そうとする。

 ぜんぜんうごこうとしないどころか、胸に当てた手を握ってきた108番は、腰をかがめてにやりと私の顔をのぞきこんできた。
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