Bravo, nous avons gagné !
 酷い暴行とは、パートナー間の性暴力だった。
 雅子は、箱入り娘ということもあり、もともと婚前交渉には抵抗があった。
 しかし、一樹に嫌われることを恐れ、たった一度許してしまったら、それ以降の一樹は、“自分の女”との行為を当然と思うだけでなく、避妊もしなくなった。
 故に、その都度、雅子は慌てて婦人科に駆け込み、アフターピルを服用していた。
 そんなことが続いた為、婦人科の医師から、
「あなた…もしかして、パートナーから合意ない行為を強要させられているのでは?それって、性暴力よ」
 そう言われ、これまではずっと、愛ゆえの行為だと無理にでも信じようとしていたものが、一瞬で音を立てて崩れた。
 箱入り娘の雅子は、自分が疵物になったことを両親には決して知られたくない。
 両親は、御厨家の現実を知らず、町一番の大富豪との御縁を素直に喜んでいたから尚更だ。
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