Bravo, nous avons gagné !

　かつて雅子が警察に相談したのは、一樹に危険日であることを伝えたに関わらず、それを完全に無視された為。
　雅子はもう、警察に助けを求めるしかないと思い、いつものように婦人科に駆け込んだあと、泣きながら警察に電話をかけた。
　しかし、夜勤体制だからといって、電話の向こうの警官は面倒臭そうに、
「相手は婚約者なんでしょ？」
「痴話喧嘩で警察に相談されてもねえ」
「話し合いができてない証拠じゃないの」
　などと、傷を抉るようなことしか言わず、雅子はもう二度と警察には電話しないと心に誓った。
　シェルターなども探してみたが、この田舎にはそのようなものはないとのこと。
　結局、雅子は今もなお、一樹と別れることも出来ず、先刻見かけた、幸せそうな芙蓉と夕夜の姿が、何故かとても胸に痛かった。