Bravo, nous avons gagné !
 夕夜のことを思うほど、本当にそれでいいのかと俯く芙蓉に、
「僕のお嫁さんになってくれたら、御厨家からも抜け出せるじゃない」
「私は勿論いいよ?でも、夕夜さんにとってはデメリットなんじゃ…」
「デメリットどころか、僕の望みなんだよ。だからといって、無理強いはしないし、即答してくれとも言わない。ただ、もし僕に気を遣っているだけなら、その必要はないよ。だって僕は、まだ一人前とも呼べないパン職人に過ぎないんだからね」
「それを言ったら、私なんて、非正規雇用の郵便配達よ?」
「じゃあ、釣り合いがとれてると思うけどな」
 二人は暫く見つめ合ったあと、芙蓉のほうからそっとキスをした。
「このキスは、YESの意味だと思っていいの?」
 夕夜の問いに、芙蓉は何度も頷いた。
 今や愛の巣である団地に帰ると、夕夜は、
「もうじき、1階の部屋が空くみたいだから、そっちに移ろうか?それとも、もっと新婚生活に相応しい家を探す?」
 そう尋ねた。
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