パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「何泣いてんだよ」


隣から声がした。

泣いてて気付かなかったけど、いつの間に隣に…


てゆーか今の声って?

え、その声って…


えぇぇぇっ!!?


「け、ケイ…!?」


すぐにバッと顔を上げた。
ひどい顔してたとか構ってられないぐらい驚いちゃって。

「ひでぇ顔してんな」

なのにそれを言っちゃうところが紛れもなくそうだ。私を見て眉間にしわを寄せて、煩わしそうな顔をするんだ。

「ケイっ、なんで…っ」

泣いたせいで声がこもっちゃう、ちゃんと喋れてるかもわかんない。

「彗が紫衣と話せってさ」

トンッと柵に背中を付けて寄りかかった。

「なんで…」

久しぶりに聞いたその声が私の耳を刺激して涙はさらに…

「あっ!また私がっ、違うこと考えちゃってたから…!」

そうだ、そうだったら泣いてる場合じゃない!

私また…っ!

「四条美月が教えてたんだよ、紫衣の様子がおかしいって」

美月が…?
あ、私が美月に話したから…

「よかったな、紫衣には紫衣を心配してくれる奴がいる」

眉をハの字にしたケイが微笑んだ。

「もう俺がいなくても平気だ」

私を見て笑うから、私はどんな顔していいのかわからなかった。

「俺の方が平気じゃねぇかもしれねぇーけど」

一瞬だけ目を伏せて影を宿らせる。

すぐにもう一度私の顔を見た。

「まぁ、どうにかなるか」

「な、なによ…それ…っ」

やっぱり止められないよ、そんな顔しないでよ。

そんなのらしくないじゃん。

強引で、自分勝手で、めちゃくちゃな…


そんなケイでいてくれないと。


ボロボロ溢れた涙を拭いたせいで制服の袖はびちゃびちゃだった。
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