パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「ねぇ、あのさ…」

「なんだよ」

「柏木先輩も…二重人格なの?」

「はァ?」

「だってそんな感じだったじゃん!急に人が変わったみたいだったよ!?」

流れ的にはこの展開だってありえたはずなのになぜか呆れた顔をされた。いかにも私が変なことを言ってるみたいに半開きの目で口を開けて私が貸したハンカチで手を拭いた。

「私が知ってる柏木先輩からしたら別人っ」

「あいつはあんな性格、裏表が激しいだけだ」

「でもッ」

「全部あいつだよ」

なんでそうやって言い切れるんだろう、それは自分がそうだから?

だけど私からしたら…

「そうは思えないんだけど。いつもにこにこして優しい空気まとってて、学校でも人気だし、それが柏木先輩で今のは私の知ってる柏木先輩じゃ…」

「紫衣が知ってるのは表の星だってことだろ」

表の柏木先輩…?
裏の柏木先輩がいるってこと?

それは二重人格とは、言わないんだ…

「つーか何戻って来てんだよ」

手ですくいあげたプリンを入れたカップをおぼんに乗せた。
拭き終わったハンカチを隣に置いて、はぁっと息を吐く。

「さっさと帰ってりゃ裏の星に会わずに済んだのに」

すくっと立ち上がって自分の部屋に入って行こうとした。

「…だって私彼女だもん」

その背中を見て私も立ち上がった。

「彗くんの彼女だから、“彗くん”が悲しんでたら悲しい」

「…。」

「彗くんも…いつも柏木先輩にあんなことされてるの?」

「…されてねーよ」

プリンが嫌いだって言った理由がわかった気がした。


「あれは俺だけだから」


部屋に戻って持って来たティッシュで床を拭いた。

他にも聞きたいことがあったはずなのに聞けなくなっちゃった。


ただ黙ったまま床を拭く姿を見てたら。
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