「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
第一章 婚約破棄
 アルペリオ・ランペシー侯爵令息は、私にとって兄のような存在である。
 父親同士の仲が良いこともあって、彼とは幼い頃からよく遊んでいた。私には兄も姉もおらず、年上のアルペリオはとても頼りになる存在だったのだ。
 そんな彼と私が婚約するのは、自然な成り行きだったといえるだろう。お父様達は、とても軽く決めたらしい。

「こうやって二人で会うのは、随分と久し振りだね?」
「アルペリオ兄様、お元気そうで何よりです」
「レミアナ、また一段と綺麗になったね……」
「ありがとうございます」

 ある程度年齢を重ねていく内に、私とアルペリオ兄様が会う頻度は減っていた。
 婚約が決まって会うことになったが、それは数か月振りの再会である。
 ただ私もアルペリオ兄様も、以前と変わらず会話をしていた。お互いにそれ程、変わっていないのだろう。それが私は、少し嬉しかった。

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