「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
第三章 それぞれの終わり
 私とクルレイド様は、ギルドルア様とともに王城の地下牢に来ていた。
 その奥にある一際大きな牢屋の中には、一人の女性がいる。牢屋の隅で力なく項垂れているその女性は、ランカーソン伯爵夫人であるはずだ。

「クルレイド様……」
「……兄上、あれがランカーソン伯爵夫人なのですか?」
「ああ、そうだとも。彼女は間違いなくランカーソン伯爵夫人だ」

 牢屋の中にいる女性は、私達が知っているランカーソン伯爵夫人とはかけ離れていた。
 確かに面影はあるが、明らかに老け込んでいる。ギルドルア様が彼女にした拷問によって、そうなったということだろうか。

「……ああ」

 そこでランカーソン伯爵夫人は、私達に目を向けた。
 彼女の視線は、焦点が合っていない。私やクルレイド様のことをきちんと認識できているかは、微妙な所だ。

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