「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
「しっ……知っていることは全て話したわ! ここから出して頂戴! 私は素直に従ったじゃない! これ以上拘束する意味なんてないでしょう!」

 ランカーソン伯爵夫人は、鉄格子を掴みながら必死の形相でそう言ってきた。
 その勢いに、私とクルレイド様は少し怯んでしまう。

「ランカーソン伯爵夫人、あなた程の人がそのように動揺するとはみっともない」
「……あ、あなたは」

 ギルドルア様の言葉に、夫人は目を丸めていた。
 それから彼女の表情は、ゆっくりと変わっていく。老け込んでいるが、その表情は確かにいつもの彼女である。ギルドルア様を見つけて、冷静さを幾分か取り戻したらしい。

「第一王子ギルドルアッ……!」
「おやおや、今度の矛先は僕ですか? しかし、そのような顔をするのはよくない。美しい顔が台無しだ」
「どの口がそんなことを……あなたは! 私を嵌めて……」
< 118 / 269 >

この作品をシェア

pagetop