「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
第四章 時は流れ
 時が流れるのは、早いものである。
 ランカーソン伯爵夫人の事件から、一年もの月日が流れているという事実に、私はそんなことを思っていた。
 私は現在、クルレイド様とともにかつてランペシー侯爵家の屋敷だった場所で暮らしている。私達は、ランペシー侯爵家の領地を引き継いだのだ。

「レミアナさん、どうかしたんですか?」
「ああ、クルレイド様、すみません。少し昔のことを思い出していたんです」
「昔のこと?」
「ええ、ランカーソン伯爵夫人の事件から、もう一年も経つでしょう?」
「言われてみれば、そうですね……」

 私の言葉に、クルレイド様は驚いたような顔をしている。彼にとっても、一年が過ぎ去ったことは驚きなのだろう。
 この一年で、色々なことがあった。目まぐるしく変化している状況によって忙しくしていたため、私もクルレイド様も一年間という月日をあっという間に感じたのかもしれない。

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