【シナリオ】御曹司には興味がない〜スマホ依存症の私に執着しないで〜
第一章 気になる報告書
〇仙石不動産社長室
社長の仙石翠と秘書の蓼科朝陽が、一冊の資料を手に取り見てる。
翠「この物件調査報告書は、誰が作ったんだ?」
蓼科「作成者は水野さんになっています」
翠「またか」
この資料に、不備があるわけではない。反対に、いつも回ってくる書類の中でも、完璧な仕上がりなのだ。
父親が経営する仙石不動産に入社し、全国の支店を回って、一年前に本社へと戻って来て、翠が社長に就任した。
整った顔立ちのイケメンで、どこに行ってもモテモテだが、公私混同が大嫌いで、特に仕事には厳しい。
相談役として父親の名前は残っているが、経営には一切口を出すつもりがないと宣言され、全てを任された翠。
一年経って、ようやく余裕が出てきた。そこで最近気づいたのが、この報告書なのだ。
仙石不動産は、土地や建物の売買を行う会社で、個人宅から法人までを相手にしている。
売買をするうえでも、特に重要なのがこの報告書なのだ。もし万が一、調べたことが間違っていたり漏れていたら、お客様へ損害をあたえてしまう。
社長である翠が細かく報告書をチェックすることはないが、先日たまたま目にした報告書の完成度が素晴らしく、それ以降は回ってきた資料を見るようになった。
蓼科「よほど気になるのですね」
翠「朝陽はなんとも思わないのか?」
翠の同期で、入社と同時に将来の翠の秘書候補となった蓼科は、ずっと翠と行動を共にしてきた。
蓼科「いつ見ても完璧だと思います」
翠「いや、水野という人物についてだ」
蓼科「水野紗菜さん32歳。大学卒業後、仙石不動産へ入社。営業部では、なくてはならない人物のようですね」
翠「……。詳しいな。俺より二歳年上か……」
蓼科「社長が、あまりにも気になさっていたので調べました」
翠「で?」
蓼科「はい? これ以上に何をお望みですか?」
翠「……」
確かにこれ以上は、社長といえどもプライベートのことになってしまう。ただ、これだけの完成度で報告書を仕上げて来る、水野紗菜が気になってしかたがない。
蓼科「おまえ社長だぞ? 個人的な動きはするなよ」
今にも営業部へ乗り込みそうな翠を、上司ではなく親友として止めた。
翠「俺、こいつと結婚するわ」
蓼科「はあ? おまえ正気か? 会ったこともない相手と結婚をする? なに言ってるんだ?」
翠「この報告書が全てを語っている」
今まで何度もお見合い話を断り、結婚する気がないのだと思っていた社長、いや親友のいきなりの結婚宣言。
入社当時は若かったこともあり、お互いに適当に遊んでいたが、最近ではそんなことも許されない立場になってしまった。
突然、社長の結婚相手に一方的に抜擢された水野さんを、朝陽は気の毒に思う。
それと同時に、全く好みではない女性だったらどうするのだろうという疑問も浮かんだ。
〇営業部
社長と秘書が、紗菜の話題をしていた頃。
紗菜「クシュン、クシュン」
後輩女性「紗菜さん、大丈夫ですか?風邪でも引きましたか?」
紗菜「風邪なのかな。なんか背筋がゾクゾクする」
後輩女性「気をつけて下さいね」
紗菜「ありがとう。調査に出てそのまま直帰しようかな」
後輩女性「部長が戻ったら伝えておきますよ」
紗菜「よろしく」
まさか、自分がとんでもない人にロックオンされているとは知らない紗菜は、風邪かもしれないと用心するのだった。
社長の仙石翠と秘書の蓼科朝陽が、一冊の資料を手に取り見てる。
翠「この物件調査報告書は、誰が作ったんだ?」
蓼科「作成者は水野さんになっています」
翠「またか」
この資料に、不備があるわけではない。反対に、いつも回ってくる書類の中でも、完璧な仕上がりなのだ。
父親が経営する仙石不動産に入社し、全国の支店を回って、一年前に本社へと戻って来て、翠が社長に就任した。
整った顔立ちのイケメンで、どこに行ってもモテモテだが、公私混同が大嫌いで、特に仕事には厳しい。
相談役として父親の名前は残っているが、経営には一切口を出すつもりがないと宣言され、全てを任された翠。
一年経って、ようやく余裕が出てきた。そこで最近気づいたのが、この報告書なのだ。
仙石不動産は、土地や建物の売買を行う会社で、個人宅から法人までを相手にしている。
売買をするうえでも、特に重要なのがこの報告書なのだ。もし万が一、調べたことが間違っていたり漏れていたら、お客様へ損害をあたえてしまう。
社長である翠が細かく報告書をチェックすることはないが、先日たまたま目にした報告書の完成度が素晴らしく、それ以降は回ってきた資料を見るようになった。
蓼科「よほど気になるのですね」
翠「朝陽はなんとも思わないのか?」
翠の同期で、入社と同時に将来の翠の秘書候補となった蓼科は、ずっと翠と行動を共にしてきた。
蓼科「いつ見ても完璧だと思います」
翠「いや、水野という人物についてだ」
蓼科「水野紗菜さん32歳。大学卒業後、仙石不動産へ入社。営業部では、なくてはならない人物のようですね」
翠「……。詳しいな。俺より二歳年上か……」
蓼科「社長が、あまりにも気になさっていたので調べました」
翠「で?」
蓼科「はい? これ以上に何をお望みですか?」
翠「……」
確かにこれ以上は、社長といえどもプライベートのことになってしまう。ただ、これだけの完成度で報告書を仕上げて来る、水野紗菜が気になってしかたがない。
蓼科「おまえ社長だぞ? 個人的な動きはするなよ」
今にも営業部へ乗り込みそうな翠を、上司ではなく親友として止めた。
翠「俺、こいつと結婚するわ」
蓼科「はあ? おまえ正気か? 会ったこともない相手と結婚をする? なに言ってるんだ?」
翠「この報告書が全てを語っている」
今まで何度もお見合い話を断り、結婚する気がないのだと思っていた社長、いや親友のいきなりの結婚宣言。
入社当時は若かったこともあり、お互いに適当に遊んでいたが、最近ではそんなことも許されない立場になってしまった。
突然、社長の結婚相手に一方的に抜擢された水野さんを、朝陽は気の毒に思う。
それと同時に、全く好みではない女性だったらどうするのだろうという疑問も浮かんだ。
〇営業部
社長と秘書が、紗菜の話題をしていた頃。
紗菜「クシュン、クシュン」
後輩女性「紗菜さん、大丈夫ですか?風邪でも引きましたか?」
紗菜「風邪なのかな。なんか背筋がゾクゾクする」
後輩女性「気をつけて下さいね」
紗菜「ありがとう。調査に出てそのまま直帰しようかな」
後輩女性「部長が戻ったら伝えておきますよ」
紗菜「よろしく」
まさか、自分がとんでもない人にロックオンされているとは知らない紗菜は、風邪かもしれないと用心するのだった。
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