キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「な、長い間、家に帰らず申し訳ありませんでした」

「……」


頭を下げる。

だけと、お父さまは何も言わなかった。


お父さまはいつもそうだ。

いつも私には何も声をかけない。


お兄さまみたいにキツイ言葉を掛けられるよりはいい――

と言えば、聞こえはいいかもしれないけど。


とどのつまり、お父さまは私に興味がない。

だから、いつも私を空気扱いする。


今だって私には目もくれず、ひたすら書類に目を通している。

きっと「用が済んだなら出て行け」ってことかな。

そう思って、もう一度会釈をした後、静かに退室した。


パタン


「はぁ〜、緊張した」


お父さまに話が出来ただけで、すごい前進だ。

怒ってる雰囲気もなかったし……。

もしかしたらお父さま、いなくなった私を心配してくれていたのかな?
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