クズ男に囚われたら。


「橘花」

「……なに」

「今日も可愛いね」

「っ……!!」



そしてさらりと告げられた、可愛い発言。


……っ、この男は。


2年になってから覚えたらしい瀬能の新しい技。

1年のときは、こんなどストレートな口説き文句を口にするような男じゃなかった。


ただでさえ甘い罠が多いのに、真っ直ぐな言葉を向けられたらこっちはたまったもんじゃない。


不意にやってくるそれに、わたしはまだ慣れない。



「……タチ悪い」

「うん、知ってるよ」


また、瀬能は喉を鳴らして楽しそうに笑う。


それから小さな声で、「今日も元気そうだね」と安心したように言った。


右手が伸びて、わたしの肩まで伸びたダークブラウンの髪を撫でる。




「また来いよ、七帆」


……あぁ、もう。

わたしは、今日も彼から抜け出せなかった。



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