Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「あの、春香さん。明日は休みですよね。良かったら一緒に出かけませんか?」
「お出かけ? うんうん、行きたい!」
「良かった。実は気になるイベントをやっていて、鮎川さんにお願いしてチケットをいただいたんです。良かったら一緒に行きませんか?」

 瑠維は立ち上がると、チェストの引き出しからチケットを二枚持って戻ってくる。それは春香が以前から好きな画家の展覧会だった。

「うわぁ、この人すごく好きなの! この展示会もずっと行きたいって思っていて……ってもしかして、私が好きだってわかってて言ってる?」

 怪訝な顔で目を細めた春香に対し、瑠維はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。これは肯定としか捉えられない。

「さぁ、どうでしょう。でも確かに春香さんの持ち物、昔からこの作家のグッズが昔から多いですよね」

 瑠維は楽しそうにそうはぐらかす。

 完全に確信犯ねーー彼が自分のことを見ていてくれたと物語っている。

「ついでに何かスイーツ食べようよ」
「いいですね」
「実は今日ヒロくんのところで食べた抹茶のプリンアラモードがすごく美味しかったの。瑠維くんにも食べさせてあげたかったな」

 その時、瑠維の口の端がピクッと動いたように見えた。何かを堪えるように、ふぅっと息を吐く。

 何か気になことでも言っただろうか。彼の表情からは何も掴めない。自分の言葉を振り返った春香はある一つの言葉に行き着き、それを確かめるため、瑠維の顔を覗き込んで問いかけた。

「もしかして……嫌だった?」

 瑠維は口籠ってから、頭を掻きながら口を開く。

「嫌というわけではないんです。僕も名前で呼んでもらえているし、今は何とも思ってはいないです」

 瑠維は春香の手に自分の手を重ねると、その手を口の辺りまで持ってきてキスをする。

「ただ……やはり思い出すんです。池田先輩を好きな春香さんをずっと見ていたあの頃のことをーーでも春香さんが好きだと言ってくれるたびに自信がついていく。だから気にしないでください」

 遠い目をして寂しそうに微笑んだ瑠維の首に回し、ぎゅっと抱きしめる。

「瑠維くん」
「はい」
「明日が楽しみだね」
「僕もです」

 二人は顔を見合わせて笑うと、再びカレーを食べ始めた。
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