Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「高校時代は、春香さんの視界に入れなかった。なんとか先輩のそばにいて、かろうじて存在アピールをしていた感じですから」

 こんなに素敵な男性が好意を寄せてくれていたのに、今までどうして気がつかなかったんだろう。

「池田先輩にだけ見せる笑顔を僕だけのものにしたい、近藤先輩にだけ見せる砕けた表情も僕だけのものにしたい。それから誰にも見せたことがない春香さんの一面を僕だけのものにしたいーー独占欲の塊ですよね。すみません」

 確かに言われた言葉はすごいものかもしれない。しかし春香はそれが心地良いとすら思ってしまった。

 それは瑠維の本心だが、別に押し付けられたわけではない。むしろこんなふうに愛されるのを求めていたのかもしれない。

 すると体の奥から熱くなり、瑠維に触れたい衝動に駆られる。

「……ねぇ瑠維くん、すごく嬉しいからキスしていい?」
「えっ、い、今ですか? いいですけど……」

 珍しく照れたように狼狽える瑠維に唇を重ねれば、カレーの味がする。だけどそれすら愛おしく感じた。

「瑠維くん、好きだよ、大好き。私ね、ヒロくんには卒業式の一回しか"好き"って言ってないの。まぁフラれちゃったけど……私の言いたいこと、わかる?」
「……あの、僕にわかるようにはっきりと教えてください」
「じゃあよく聞いてね。何回好きって言っても止まらないくらい、瑠維くんが好きなの。それに……瑠維くんしか知らない姿だってたくさんあるでしょ? 例えば……べ、ベッドの中での私とか、瑠維くんしか知らないよ?」

 瑠維の顔が赤く染まっていく。彼が自分を好きだと言ってくれていることが奇跡だと思えるくらい、瑠維の深い沼にハマっていた。

 もっと欲しい、もっと近付きたい、もっともっとーー心はどんどん欲張りになっていく。

「瑠維くんは私の"特別"だってこと、ちゃんと覚えておいてね」

 瑠維の顔がみるみるうちに綻ぶのがわかった。ヤキモチは嬉しいけれど、こうして言葉にすることで、春香の中で瑠維が一番であることを知って欲しかった。

「ありがとうございます。すごく嬉しいです」

 彼の笑顔を見るだけで、こんなにも幸せな気持ちになれるのだから不思議だ。
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