Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜

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 街がクリスマスムード一色になっているのを見ながら、春香は初めてのクリスマスを瑠維とどう過ごすかという考えで頭がいっぱいだった。

 スマホでデートスポットを調べるだけで浮き足立つ。そういえば、こんなふうに恋人と過ごす場所を探すのは初めてかもしれない。

 今まで椿以外の相手には『どこでもいいよ』と返事をしていた。それがこんなにスマホにかじりつく日が来るなんて不思議で仕方ない。

「何を調べているんですか?」

 ソファに座ってニヤニヤしていたからか、お風呂から上がった瑠維がスマホを覗き込んできた。

 隣に腰を下ろした瑠維は、春香の腰に手を回して、スマホを持っていた春香の手をグイッと引き寄せた。

「瑠維くんと最初のクリスマスだし、どこがいいかなぁって思って」
「僕は春香さんとならどこでもいいです。むしろホテルに泊まって、部屋から一歩も出なくていいくらいですから」

 そう言って春香の首筋にキスの雨を降らす。思わず甘い声を漏らしてしまったが、今は流されてはいけない。

「せっかくのクリスマスなのに、それはもったいないよ。ほら、一日は長いわけだし……」
「それは夜から朝までならベッドから出なくてもいいってことですか?」
「……そういうことにしておく」

 パーカーの裾から入り込んでくる手を必死に押さえながらクリスマスの話を進めようとしたが、瑠維のお風呂上がりの体の温かさや、ボディソープのふんわりとした香り、まだ乾ききっていない髪を感じて、くすぐったくて身震いしてしまう。

 しかし突然瑠維の手がピタリと止まり、春香をぎゅっと抱きしめた。

「春香さん」
「なぁに?」
「今日電話がありまして、リフォームが終わったそうです」
「えっ、そうなの? 結構長くかかったねぇ」
「家全体でしたからね。それで来週末に内装の確認と引き渡しがあるんですが、もし良かったら一緒に行きますか?」

 瑠維がそう言うと、春香は目をキラキラさせて彼を見る。

「行きたい行きたい! どんな家か見てみたいし」

 瑠維は目を瞬き、嬉しそうに微笑む。

「興味を持ってもらえたなら本望です」
「だって瑠維くんの家でしょ? それは興味津々だよ」
「では来週ーーまた日曜日が休みですか?」
「あっ、来週は土曜日が休みで、日曜日は午後から出勤になっちゃったの」
「なるほど。では土曜日に行きましょうか」
「うん! すごく楽しみ」

 すると瑠維の手が再び動き始める。

「クリスマスのことを決めたいのに……」
「大丈夫です。後でちゃんと決めましょう」

 そう言うと瑠維は春香にキスをした。
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