Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜

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 瑠維との約束が始まってから、一週間が過ぎようとしていた。

 当日の朝に春香が献立を考え、瑠維に買い物リストを送る。そうすると瑠維は買い物を済ませた上で、従業員出入り口に迎えに来てくれるのだ。

 それからは歩いて瑠維のマンションに行き、すぐさま二人分の夕食の調理に入る。そして食事が終わると瑠維が片付けを引き受けてくれるので、春香はそのまま車で自宅まで送ってもらうだけだった。

 自分が置かれている状況のことをすっかり忘れて瑠維との時間を楽しんでしまう自分に、後ろめたさを感じてしまうこともあった。

 それでも瑠維の新しい一面を知っていくうちに二人の仲も徐々に深まり、新しい友人が一人増えたような感覚。全部ではないが彼の表情を読み取れるようにもなっていた。

 ロッカールームで身支度を整えた春香は、早番として出勤し、売り場の在庫チェックをしていた時だった。

「佐倉さん!」
と背後から声をかけられ振り返った。

 するとそこには黒髪のロングヘア、グレーのパーカーにデニムスカート姿の、大学生の女の子が笑顔で立っていた。

 その子を見るなり、春香は満面の笑みを浮かべる。

真白(ましろ)ちゃん! お久しぶりー、元気だった?」
「はい、元気です! なかなか化粧品がなくならないから来られなくてすみません」
「ううん、きっと大切に使ってくれてるんだねぇ。ありがとう。今日は何か探しもの?」

 真白は大学進学のために、今年上京してきたばかりの女の子だった。

 あれは四月半ばのこと。店先で挙動不審な様子で店の中を見ていた真白に春香が声をかけたのだ。

 話を聞いてみると、テレビのCMで流れていた口紅が欲しくて店までやってきたものの、それがどの商品なのか、自分に合うものがどれかわからずにいたのだという。

 春香は真白をカウンター前に連れて行くと、肌の色味やパーソナルカラーの診断をして、彼女にぴったりの口紅を選んだのだ。

 その日から真白は時々店にやって来ては、春香に声をかけるようになった。
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