Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
 その表情を見た春香はドキッとした。安堵の中にどこか辛さを抱えたような、複雑な視線を春香に投げかけている。

「でも……あなたが無事で本当に良かったです」

 本当に心配してくれていたんだーー瑠維の言葉を聞いて、心から申し訳なくなる。

「こちらこそ……助けてくれてありがとう。言い方はおかしいけど、瑠維くんが私のメッセージを疑ってくれなかったら、今頃どうなっていたかわからないもの」

 すると瑠維は小さく笑みを浮かべた。

「大丈夫です。あなたのことは大体わかるので……二年間、池田先輩越しに見ていましたからね」
「……ほとんど話してないのに?」
「その分、観察してましたから」
「えっ、そうなの⁈ ちょっと恥ずかしいんだけど」
「大丈夫です。春香さんはわかりやすいくらい、そのままなので。心の声がダダ漏れですからね」
「……けなされてる?」
「褒めてます。そんなあなただから安心出来るので」

 瑠維の手が遠慮がちに伸びてきて、春香の髪に触れる。先ほど町村にも同じことをされかけたのに、その時とは全く違う感情が湧いてくるのを感じた。

 春香はふっと目を伏せた。なんて温かいんだろう。この数日間、安心して過ごせたのは彼がいてくれたからだ。

 この手は怖いものから私を守ってくれる。そう信じられる。

「春香さん?」

 声をかけられ、ハッと我に返って目を開けると、瑠維が心配そうにこちらを見つめていた。その途端、瑠維の視線に捕らえらた体が熱くなるのを感じる。

 それを悟られないように慌てて顔を背けた。

「あっ、ご、ごめんね。ちょっとボーっとしてた」
「大丈夫ですか? きっとまだいろいろ思い出して辛いこともあると思いますが、僕に何か出来ることがあれば言ってくださいね」
「うん、ありがとう」

 瑠維が頷いたのと同時に、浴室から風呂が沸いたことを知らせる音楽が聞こえてきた。

「良かったら先にお風呂に入ってください」
「そんな、悪いよ。ほら、使った食器を洗うし……」
「これくらい、僕がやりますから、春香さんはゆっくりお風呂に入ってきてください」

 瑠維に背中を押され浴室に入っていく。

「この隣の寝室にキャリーバッグを運んであるので、自由に使ってください。一応新しい歯ブラシとタオルを洗面台に置いておきました」
「えっ、寝室?」
「僕は書斎に布団を敷いて寝るので、安心して使ってください」
「えっ、そんな……。あの、私はソファを貸してもらえたらそれで大丈夫だよ。私のことは気にせず寝室使って……」
「その話は後でいいですから、とりあえずお風呂に入ってください。いいですか、ゆっくり温まるんですよ」

 ごねる春香を脱衣所に押し込むと、瑠維は勢いよくドアを閉めた。
< 52 / 151 >

この作品をシェア

pagetop