Snow magic
想い出と追憶
柚燈Side
「……ハハッ。『……ねぇ、柚燈なんでしょう?……何で、逃げるの?』か。」
俺は、耳を澄ませ椛の足音がしなくなったのを聞いてから乾いた笑いをこぼした。
長い月日をかけて無理やり忘れさせていた大切な記憶と愛おしい気持ちが一瞬にして呼び戻されてしまった。
同時に機能しない目からは、涙がこぼれて落ちていた。
そんな涙は切なく海色を映して、静かにこぼれ落ちた___
……あんな行動をとる椛なんて、初めて見たか もしれない。
俺はさっきの彼女に触れられたときの意志の強さと言葉を思い出していた。
俺、七瀬柚燈と風乃椛は生まれたときからずっと一緒に生きてきた幼馴染だ。
そんな椛は、地元の伊炉里島にいたときからどちらかと言うとオドオドしていて人見知りの多い大人しいタイプの子だった。
でも、仲良かった俺らの前ではよく笑って、なによりずば抜けて芸術や文章の才能があった。
ずっと、そんな彼女に憧れ、いつの間にかそれが恋愛感情に変わっていた。
小さい頃からずっとずっと椛だけが好きだった。
「……自分から離れたくせして結局連絡先渡して繋がろうとしてんじゃん、俺。」
もう1度会いたい、なんて思った俺がバカだった と思う。
こんなことになってしまった俺はもう二度と椛と会わない方が良い。
そう思うのに……そう誓おうとするのに。
心は違っていたらしく、離れようとすればするほど再度目からは涙が溢れてきた。
自分に呪いをかけるのに、結局意味もない。
どうしたら………俺は椛たちから離れられる…?迷惑をかけずに済む?
自分の心を落ち着けるために、はぁ…、とため息をついて、波の音に耳を澄ませた。
波の音は、ザーッと響き、バックンバックン言っていたオレの心をなだめて落ち着かせてくれる。