Snow magic
「……。待って…、椛…!」
「……っ!!えっ、……?」
私は柚燈のクールさが欠けたような声に戸惑って、振り向いた。
不意に心臓がバックンと跳ねた。
こんなに焦った柚燈なんて初めて見たかもしれない。
「…っえ…と、どうしたの?柚燈。」
振り向いた先にいた柚燈はまた俯いていて表情が何も見えない。
……今度こそ、何を話されるの…?
柚燈が一度別れた誰かを引き留めるなんて珍しく大きな戸惑いを覚えた。
覚悟を決めたように顔を上げた柚燈は、
「……ふぅ。……今度、全部話すから。また近々会いたい。」
と呟きながら慣れた手つきで、ポケットの中から名刺のような小さな紙を差し出してきた。
紙を受け取り、見てみるとそこには、電話番号とメアド、LINEのIDが書いてあった。
「…分かった。…えっ…と、後で連絡するね。」
なんとも言い表せない感情を胸に抱きながらも、時間が迫っているので素直に頷いて紙を受け取った。
「……じゃあね、椛。引き止めてごめん。」
そう言って、私の進行方向とは逆の坂の下へ足早に去っていった。
白杖の音を立てながら。
静かに去っていく姿は本当に人間じゃなく幽霊や妖精のよう。
……柚燈。
あなたは、どうして全てを隠して消えたの……?
そう心の中で呟くと、柚燈を見つけた私を責めるみたいに突き刺すような冷たい風が一層強く吹き立てた。