極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
 院長夫妻の元を訪ねてから二週間後、拓海さんのマンションへ引っ越すことになった。
 花村医院からは遠いため、退職せざるをえないのが残念だけれど、新しい場所でまた仕事を探そうと思う。それに、新しい地区は保育園に入りやすいと聞いている。
「菜乃花」
 仕事の最終日、廊下で康太くんに声をかけられた。
「いよいよ退職だな」
「はい、康太くんのおかげでなんとか生活できるようになって、本当に感謝してます。ありがとうございました」
「大袈裟だなあ」
 康太くんは頭を掻いて笑う。そして黙ったかと思いきや、康太くんは真面目な顔で問う。
「なあ、もしも……もしも高校のとき、俺が余計なことを言ってなければ、今菜乃花のそばにいるのは俺だったのかな」
 予想外の質問に戸惑った。『もしも』なんて絵空事だ。けれど、どんな状況でも、私は拓海さんと出会った時点で人生が変わっていたと思う。
 首を横に振った。
「私はきっと、拓海さんでないとだめなんです」
 康太くんは視線を落として目を閉じ、「そうか」と呟いた。
 人生なんていつどうなるかわからない。けれど、運命というものがあるとしたら、拓海さんと縁がずっと続いていたんだと信じたい。そして、これからも。

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