白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです

「指輪、してないんだな」
「っ……、逮捕されましたし、もう着ける必要もないかと思いまして…」

彼から貰った指輪。
シンプルなデザインだけれど、普段着け慣れない夕映は、着けること自体に抵抗がある。

「家にあるのか?」
「……いえ、持ってますけど」
「持ち歩いてるのか?」
「……何となく、家に置きっぱなしにもできなくて」
「だったら着ければいいのに」

プロポーズされたことも、エンゲージリングを貰ったことも初めてだから、例えカモフラージュの意味合いでくれたものだとしても大事にしたい気持ちには変わりない。
ただ、今はまだ『他人様の男』という決定打が、私の中で重くのしかかっている。

彼の車に乗り込みむと、車は軽やかに駐車場を後にした。

ハンドルを握る彼の左手薬指には、私の指輪とペアのものが着けられている。
バッグの中に指輪があるが、何となく取り出し辛い。

着けるべきか。
もう少し様子をみるべきか。



「指輪、貸して」
「え?」
「いいから、出して」
「……はい」

到着したのは秋葉原にあるコインパーキング。
車から降りる際に指輪を催促された。

バッグからジュエリーボックスを取り出し、彼に差し出す。
彼は有無を言わさずそこから指輪を取り出し、私の左手薬指にそれを嵌めた。
空になったボックスを鞄にしまうように促され、無言でそれをしまう。
すると、彼は満足げに微笑んだ。

そんな顔されたら、本当に自惚れてしまいそうだ。
彼に愛されているのだと…。

「今から行く店、俺の趣味じゃないんだけど、俺に拒否権無いから一時間だけ我慢して貰いたい」
「……え?」

拒否権無いって、どういうこと?

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