白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
(采人視点)

患者から好意を寄せられることはよくある話。
けれど、過激なストーカー行為となると話は別。
彼女に危害を与えずに助け、その恩を俺に向けさせるにはどうするのが一番いいだろうか?

気持ち的に不安定で食が進まないのだろう。
いつもより箸の動きが悪い。

好き嫌いがない彼女は、いつも美味しそうに食べる。
婚約者の彼女は年頃の女の子だからか、いつも会食の際は『太るから』を口にする。
どう見ても太っているようには見えないし、むしろ痩せすぎているように思う。
女子高生だから、周りの目を気にするのかもしれないが、俺からしてみれば、見た目がどうのこうのより、ご馳走された食事を美味しそうに食べてくれる方が遥かに魅力的だ。

「無償では、手は貸せないな。さすがにリスクが大きすぎるだろ」
「……そう…ですよね」

もちろん彼女をストーカーから守るつもりだ。
結婚したいと切望する相手なのだから、当然のことなのだが。

彼女が俺をもっと求めるように仕向けるには、どの角度からアプローチするのが効果的か。
采人の脳内ではストーカー男に対する対処の方法ではなく、夕映へのアプローチ戦略が練られていた。

「これで貸し四つになるな」
「ふぇっ?……ぁっ…」

住む家を提供し、送金問題を解決し、両親に対し恋人を演じて。
そして、ストーカー対策で手を貸せば、四度目だ。

「俺は寛容だから貸しが四つだとしても、四つ返せとは言わないよ」
「……っ」

俺が望むモノが何か、分かってるだろ。
君の口から出す答えは、一つしかない。

悪いな。
勝負事で負けたことはないんだ。
俺に好かれたことを恨むんだな。

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