利害一致の契約婚だったはずなのに、激しい愛が注がれるようになりました。
episode.1
 休日――それは社会人にとって身体を休めて心を癒し、来たる平日の地獄の時間(仕事)の為の英気を養う大切なひと時である。

 そんな貴重な日曜日の昼下がり、何故か私はベッドの上で母と電話をしていた。

「だーかーらぁ、分かってるって! 何度も同じ事言わないでよ。その話は聞き飽きたわ」

 もう少し寝ていたかったのに母からの着信で強制的に起こされて睡眠の邪魔をされた挙句、いつもと何ら変わらない小言を聞かされウンザリしていた私が声を荒らげるも、そんな私をよそに母も負けじと声のボリュームを上げて話を続けていく。

「聞き飽きたじゃないわよ! もう少し真面目に考えなさい! アンタねぇ、もうすぐ三十歳よ? 佐藤さんとこの美由(みゆ)ちゃんも、中根さんとこの海人(かいと)くんも、今年結婚するって言ってたのよ? 同級生はどんどん結婚話が出てるっていうのにアンタときたら――」

 私の同級生がどんどん結婚出産ラッシュという情報を聞きつけた母は、こうして毎週のように電話を掛けてきては、『良い人はいないの?』だの『母さんも早く孫の顔が見たい』だの言ってくる。

「分かってるって! でもねぇ、結婚なんてそんなに簡単に出来るもんじゃないでしょ? そもそも私だって、相手さえいれば少しは真剣に考えるわよ」
「だから! 母さんの職場の人の知り合いで良い人がいるから会ってみなさいって言ってるのよ!」

 ただ、今日はいつもと違い、お見合の話を持ち出してきたのだ。
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