利害一致の契約婚だったはずなのに、激しい愛が注がれるようになりました。
「楓のご両親って、本当に話しやすくて何だか拍子抜けしちゃった」
「そうか? まあ、実玖は会社での親父を知っているから余計に堅いイメージだと思ったのかもしれないな」
「そうそう。社長って見た目から凄く厳しそうなイメージだったから本当に驚いた。お母様の方も、見た目厳しそうな感じだったから初めは少し緊張してたけど、話してみると全然そんな事無かったし」
「良い印象を持ってくれたなら安心した。実玖の両親はどんな感じなんだ?」
「うち? そうだなぁ、うちは父が本当に寡黙な人で……基本母が一方的に話してるかな。けど私の妹がいるから父が話さなくても静かって事はないよ。女二人居るとだいぶ賑やかだよ」
「そうか。それだと挨拶の時には妹も居るという事だな?」
「あ、大丈夫。挨拶行く時は妹には出掛けてて貰うし。心配しないで」
「俺は別に居てもらっても構わない。いずれ顔を合わせる事になるんだからな」
「そお? 楓が良いって言うならいいけど……」
「妹とはいくつ離れてるんだ?」
「十歳離れてるんだ。今は大学生なの」
「結構離れてるんだな」
「うん、だから生意気よ。最近じゃ母と一緒になって私の恋愛事情に口出してきてたからね。きっと、楓を見たら驚くわ」
「そうなのか?」
「うん。だって私に結婚を前提にしてる彼氏がいるなんて信じてないらしくて、未だに嘘だと思ってるからね」
「それじゃあ、早めに伺わないとな」
「ふふ。あの子の驚く顔を見るのが楽しみだわ」

 自宅まで送ってくれた楓と家族の話をしていたらあっという間に着いていた。

 一緒になると決めてから目まぐるしく毎日が過ぎて、今日ようやく楓のご両親に挨拶をして、何だか少しずつ、楓の事が分かってきた気がする。

 まあ、口数少ないのは職場とあまり大差はないんだけど、もっとこう趣味以外には冷めた感じだと思っていたから、私の事や家族の事に興味を持ってくれていると知れて少し嬉しくなった。

「それじゃあ、送ってくれてありがとう」
「いや、俺の方こそ両親に会ってくれてありがとう」

 そして、車を降りた私は楓の車が見えなくなるまで見送り部屋へと戻って行った。
< 26 / 33 >

この作品をシェア

pagetop