【第一部完結】悪の皇女はもう誰も殺さない
無意識に呼吸が浅くなってしまう。
あの日、キャンディスを絶望へと突き落としたヴァロンタン。
彼の命令で牢に閉じ込められて罰を受けた後に首を斬り落とされた。

『俺がお前を愛することはない』

そんな言葉は今もキャンディスの胸に棘のように突き刺さっている。

(兄弟をみんな殺したんだもの。その前も侍女や従者、護衛に何の罪もない人たちも。傷つけた人が多すぎて数えられないわ……わたくしが愛されるわけがない。罰を受けるのは当たり前よ)

こうして時が戻ってから考えるのは身勝手な振る舞いをしてきた後悔ばかりだ。
アルチュールに対しても侍女やシェフ、ホワイト宮殿で働いている人たちにもそう。
今、様々な人と関わり、仲を深めていくことでキャンディスには新しい気づきがたくさんあった。

真逆作戦で行動を変えてきたキャンディスだったが、ヴァロンタンに対してもそれは同じ。
これから関わり方は大きくなっていくだろう。
キャンディスは何をしても父親からも母親からも愛されることはないと理解している。

(もう……わたくしは両親からの愛は得られない)

悲鳴をあげそうになるのを唇を噛んで堪えていると、後ろから黒髪と黒い瞳の男性が顔を出した。
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