【第一部完結】悪の皇女はもう誰も殺さない
そんなヴァロンタンの代わりにキャンディスを追い払っていたのがユーゴである。
キャンディスはユーゴのふざけた立ち振る舞いが大嫌いだった。
ユーゴの生い立ちや見た目に文句を言って罵りながら去っていくのがいつものパターンだ。

(真逆作戦ではユーゴを馬鹿にしちゃダメよね。優しく……する必要はないだろうから、アルチュールと同じように普通に接しないと)

自分の信頼を寄せる腹心を馬鹿にされてしまえば気持ちのいいものではないだろう。

キャンディスも最近、エヴァとローズを好きだと思う。
まだ少ししか共にいないけれど、彼女たちを誰かが馬鹿にするものがいたら許せないだろう。
ヴァロンタンはユーゴを庇うことはしなかったが、報告を受けていたに違いない。

キャンディスにとってユーゴは父との間を阻む邪魔者だったのだが、実際はキャンディスの方が邪険にされているという悲しいパターンである。
ヴァロンタンは無言でキャンディスに視線を送り続けている。
端正な顔立ちから感情はまったく読み取れない。

緊張からキャンディスはゴクリと唾を飲み込んだ。
ユーゴはキャンディスの前に手を伸ばす。
以前は触らないでと言いながら打ち払っていただろうが、今回は迷うことなくユーゴの手を取り立ち上がった。
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