私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 冷蔵庫を確認し、豚丼を作った。味噌汁の具は豆腐とネギだけだ。
 いつもは玉江が作ってくれるか本邸から届けられるか、どちらかだった。
 一緒に作って完食し、一緒に洗い物をして、一緒にコーヒーを飲む。
「ちょっとごはんの臭いが残ってますね」
 一鈴は窓を開けて、濡らしたタオルを振り回した。

「なにしてるんだ?」
「これで部屋の臭いがとれるんですよ」
「へえ」
 コスモは驚き、笑った。
 一鈴がタオルを片付けて戻ると、コスモは居ずまいを正した。
 それから改まった表情で言う。

「私、しばらく感じ悪かったよね。ごめん」
「大丈夫です」
 ほっとした。謝罪をくれたのだから、これからはもう大丈夫だ。
「私、嫉妬したんだ。あんたが穂希と楽しそうだったから」
 コーヒーを飲み、コスモは言った。

 一鈴の顔から血の気がひいた。
 彼女は穂希が好きなのか。
 そんなそぶりは見えなかった。結婚したくないとも言っていた。いや、それがイコールで好意がないことにはならない。
「勘違いしないで。あの男はどうでもいい」
「へ?」
「あんたの一番があいつなのが嫌だって言ってんの!」
「え?」
 一鈴はどきどきした。まるで愛の告白だ。

「私があんたの一番の友達になりたいって、子供みたいだ」
「あ、そういう」
 一鈴はほっとした。コスモは恥ずかしそうに身を縮める。
「そんな自分が嫌で、あんたを避けてたんだ。ごめん」
「ぜんぜん大丈夫です!」
 あはは、と一鈴は笑った。もっと深刻な話を想像していた。

「一鈴さんはなんでも笑うよな」
「ほっとしちゃって。えへへ」
「ごめん。それでいろいろ考えたけどさ、結局、私はあんたがうらやましいんだと思う」
 なんと答えるか、一鈴は迷った。
 光栄です!
 それだとふざけすぎだろうか。
 かといって真面目に答えるともっと空気が重くなりそうだ。
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