私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 そのときだった。
 メイドの一人が手を滑らせて赤ワインをこぼして恭子にかかった。
「きゃあ!」
「も、申し訳ございません!」
 メイドはぺこぺこと頭を下げる。
 恭子のスカートに、赤い染みが広がっていた。
 一鈴は白ワインのボトルを手に立ち上がり、恭子に近付き、かけた。
「なにするの!?」
 恭子が非難の声を上げる。
「赤ワインは白ワインで落とすんですよ」
 言って、白ワインをかけた部分をナフキンで叩くようにした。
「そういうことはこちらにお任せください」
 多美子がすぐに一鈴を引きはがす。
 恭子は多美子に連れられて席を外した。
 気が付くと、全員の注目を浴びていた。
 恥ずかしくて、一鈴は居心地が悪くなった。



 食事を終えてぐったりと帰る途中、香珠萌に呼び止められた。
「あんたがかけたあの白ワイン、三十万するよ」
「まじですか!」
 一鈴の顔から血の気がひいた。香珠萌はぷっと吹き出した。
「あんた、面白いね」
「ただの普通の人間です」

「そういうとこ、好きだな」
 あけすけに言われ、一鈴はうるっときた。
「吉岡さん」
「コスモでいいよ。私も一鈴って呼んでいい?」
「もちろんです! 友達になってください!」
 一鈴はがしっとコスモの手を掴んだ。
「う、うん」
 一鈴に気圧され、コスモがうなずく。

「よかった、私、心細くって」
「あいつら、あんなだもんなあ」
 コスモはがりがりと頭をかいた。その様はそこらの男よりかっこいい。背が高くて細いからなおさらだ。そばかすの肌が若々しくて、濃い化粧がもったいなく見えた。

「莉衣沙は嫌味ばっか、佳乃はつんけん、爽歌はなに考えてるかわかんないし完璧すぎて一番苦手だ。私のコンプレックスかもだけど」
 爽歌を苦手だなんて、意外だった。

「爽歌っていつもナイフ持ってるんだよ。いざというときに自決できるように」
「こわっ!」
 お嬢様だと庶民とは違う生き方、覚悟が必要なのだろうか。
「あいつ、あんたを無視しようって奥様に言って、性格悪いよな」
 そういう解釈か、と一鈴は驚いた。

「婚約決まったのに残るって無駄だよな」
「選び直すって言われましたけど」
「自信もてよ。あんたかわいいから」
「それほどでも!」
 一鈴がふんぞり返ると、コスモはぷっと笑った。
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