私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 自室へ戻る気にはなれず、一鈴は外へ出た。
 暗い道をてくてくと歩く。
 数日でいろいろありすぎた。
 誰もいない夜の中で、うーん、と伸びをした。

 星がよく見えた。
 綺麗だなあ、と見上げていると、目の隅をなにかが動いた。
「猫……じゃない、狸!?」
 狸はとことこ歩いて道路の真ん中に座った。
 森に棲みついてるんだ。野生の狸なんて初めて見た。
 眺めていると、車のヘッドライトが見えた。
 狸は座ったまま動かない。

「危ない!」
 とっさに一鈴は飛び出した。
 車が急ブレーキを踏み、狸はさっと駆けて逃げた。
 一鈴はつまずいて道路に倒れ込んだ。
 ヘッドライトが激しいブレーキ音とともに近付く。
 もうだめだ! 
 一鈴は覚悟して目を閉じた。
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