家出少女の反抗

頭を真っ白にしてワイシャツに手を掛け、下着も脱ぐ。




ボロボロになったあざだらけの、私の体が洗面台の鏡に映る。




私と瓜二つの鏡側の顔が、固まっているのはいつものこと。




ここを耐えなければ、暫くの間平和は訪れない。


ーー我慢するの……霞。嵐の夜はすぐに去るから。


裸になったタイミングを見計らってか潤もスーツを脱ぎ捨てて、下着を外す。







露になった下半身に、吐き気を抑えながらゆっくりと体を密着させる。







恐怖と体が火照って、何処か別世界にいるみたいだ。




時空が歪んで、異空間にでもいるのではないかというくらい空気が違う。



それでも私はこの瞬間を、生きてるんだーー死んでるも当然の世界なのに。



「大丈夫。直ぐに僕が気持ちよくさせるから」




耳元に暑い吐息をかけられたその瞬間、一気に記憶が飛ぶ。



蟻地獄の砂場に落ちるように、深い世界に沈んでゆく。



その後三時間ぐらい、沼地のそこに堕ちて意識は消えた。







どのくらい時間が過ぎただろう。

あり得ないほど潤と体を這わせていたのにもかかわらず、やたらと頭がクリアだ。


ぼーっとしている視界を二、三回瞬き。



すぐ目に写ったのは、ワイシャツに袖を通す潤の姿。


「霞ちゃん。やっぱり僕のことが好きなんだね……沢山濡れてた。嬉しいよ」



誰だって、体を変なふうに触られたら反応はするだろう。


そういうふうに人間というものは出来てるんだよ。


生粋の大馬鹿変態だ。


「はい、はい」



私はため息交じりに、シーツを全身に引き伸ばし寝返りを打った。


性的な接触があったからといって、そこに本人の深い愛があるだなんて勘違いしてる潤。



ーーだから、四十年間ぐらい彼女がいなかった人生だと言っていたのも頷けるわ………気持ち悪い。



母と私が一緒に顔合わせをしたとき「彼女が1人も出来なかった人生だった……でも霞ちゃんのお母さんに出会って変わったよ。運命の人だ」なんて誇らしげに語っていた。



「お母さんの事……ちゃんと今でも好きなの?」

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