家出少女の反抗
自然とそう口がこぼれて、私はシーツをぎゅっと握り締めた。
聞いたところで、自分と思っていた回答とどうせ違うに決まっているって知ってるのに、尋ねてしまったからだ。
そして、「いつまで、こんな生活が続くの?」という不安から、赤子のようにシーツの裾をぎゅっと握り潰し、心を守っているのかもしれない。
まぁ、誰も助けてはくれないし世界がいきなり変わることもないと判明はしているのだけど。
「お母さん?なにを言ってるんだい霞……。ヤキモキかい?」
私が反対側に背を向けていた潤が背後からハグをしてきた。
ねっとりとした汗が、腕を伝って顔や露骨を濡らしてゆく。
息が詰まるような加齢臭に、一瞬眩む。
「僕がお母さんを好きになったのはね……霞ちゃんがいたからなんだよ」
耳元でそう囁き、潤は軽く笑った。
ーー「霞ちゃんがいたから」なんだよーーー。
分かってはいたが、頭をバッドで殴られたみたいな衝撃が全身を駆け巡る。
この人は「私を喰うつもり」で、お母さんと付き合っているの……?
今日、初めて聞いてしまった……流石に身に応える。
「それって……私のことがお母さんと出会う前から好きだったってこと?」
潤の手を振りほどいて、ゆっくりと向き合う。
悲しい気持ちと、胸の中に渦巻く憎悪がゴチャゴチャになっていて、今私はどんな顔をしているのだろう。
それを知るのは潤だけなのだけか、神様だけだ。