家出少女の反抗
「僕の名前は早風。名字が早で名前が風。事情ってやつは君達と同じって感じかな」
笑顔で対応する早風さん。
その目は何処か遠くを見ていて、どれほど悲しいことがあったのだろうと考えさせられるぐらい濁ってた。
そういう人は、何故だかわからないけど昔からわかる。
ずっと虐待を受けていたから、そういう第五感みたいなのを鍛えられて来たからかもしれない。
そして、こんな早風を見た瞬間に思った。
ーーこの人……悪い人じゃないのかも。
そう、強く。
それは、怜音先生のお墨付きだという理由もある。
だけど一つだけ確信したのは、手首にある傷だった。
左の手首に銀色の時計をしていたけれど、深い切り傷が隠しきれていないせいなのか痛々しく残っていたから。
「……でも、早風さんが私達がここのネカフェ紹介とか住まわせてくれるのは有り難いけど……私達お金持ち合わせてないよ?」
愛が困ったように早風さんに尋ねた。
そう、私達は急いで荷物を取り戻した挙げ句、肝心なお金をおいてきてしまったのだ。
親から互いに銀行口座なんて聞き出せない、のが裏目に出て貯金箱に保管していた為にやらかした。
優の部屋に、置きっぱなしにしてしまったから所持金が2人合わせて一万円しかない。