ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 というか、彼こんなに優しい人物だったのか? 
 学校では知らない者はいないと言っていいレベルの不良で絶対に関わるなというお達しが教師から出ているくらいなのだ。でもって県内一大規模な暴走族の総長。
 こんなのむしろ優しいどころか血も涙もない冷徹な人物のイメージがあっただけに、私の母親を攻撃し、私を守ると言ってくれたのは未だに喉元に引っかかるような気がしてならないが、不快な感じは無いしむしろ嬉しく感じる。

「果林?」

 彼の腕の中で考え込んでいると、私に顔を近づけてきた。

(うわっ、近い!)

 きりっとした綺麗な形をした二重の瞳が私を捉えているのがよく分かる。

「ううん、何でもない。優しいんだね、多賀野くん」
「……」

 返事は無いし表情も変わりはない。けど怒ったり不機嫌そうな顔つきには見えないので胸の中で少し息を吐いたのだった。
 すると、勇人が何かを思いついたのかゆっくりと口を開いた。

「果林……お前を守る、カラその代わりに血を……くれ」
「私の血が欲しいの?」
「じゃナイと、お腹が空く。オレは肉は食べナイ。代わりに血が欲しい」
「そっ、そっかあ……」

 他のゾンビとは違い、肉は食べない。その代わりに血を頂く。ゾンビよりかはヴァンパイア……吸血鬼にようだ。

(守ってくれるなら、仕方ない)
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