ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 私の息は切れそうなほど上がっているのに勇人の息は上がる様子は無い。
 それに、その生気の無い瞳は私をしっかり捉えている。唇が離れると唾液が糸を引いて光を浴び、きらりと輝いた。

「……もう、いい」
「そっか。じゃあ朝ご飯食べようかな」
「ああ」

 私はパジャマ姿のまま勇人を連れて1階に降り、照明をつけようか迷ったがつけない事にした。テレビのリモコンを押すと相変わらず番組はゾンビパニックの特別編成のままだ。それに昨日から感じていた事だが民放のチャンネルは全て、コマーシャルがすっかり流れなくなっている。
 
(アニメとかはしてないよなあ……)

 テレビに映し出されるのはどこもかしこもゾンビのニュースばかり。どこそこの街で人々が大量に襲われたとか、警察と自衛隊がゾンビを駆逐しに各地へ行っているが追い付いていないとか、逆に警察や自衛隊がゾンビに襲われゾンビになってしまったりとかそんな感じだ。それに昨日以上にニュース内容が凄惨さを増したように思えたので一度リモコンを押してテレビを切った。

(見ていたら吐き気がしそう)

 朝ご飯は食パンがあるのでそれをトーストで焼く。テレビが付くという事は電気が使える事でもある。トーストは普通に作動した。
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