冷徹な総長様がただの幹部(私)を溺愛してくる
冴える妃
『一条冴妃』として生きた人生は『私』にとって不幸だった。

幸せだった記憶なんてない。

だってそこにいたのは、『私』ではないから。






人生で一番大きな失敗を挙げるとするなら、やはり小学校受験に落ちたことだろう。

一次試験の筆記試験は難なく突破したが、二次試験の面接でやらかしたのだ。


失礼します、と入室したところまではよかった。
が、面接官と目が合った瞬間、何を答えるべきか急激に分からなくなってしまったのだ。


内容が全て飛んだのではない。
むしろ何を答えるべきかははっきりとしていた。



──でも、本当にパパとママの言う通りに答えていいの?



そんな疑問が降って湧いて、一瞬にして頭の中を不明瞭な灰色に塗り替えてしまった。


嘘を言ってしまったら6年間ずっと嘘の私でいなければならないのではないか。
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