蜜月溺愛心中
清貴は焦った様子の姫乃を睨み続ける。椿の着ているブラウスは、姫乃の爪が食い込んでできた傷によって血がついてしまっていた。

「……手当てをしないといけないな」

清貴は傷を見ながらそう言った後、椿を抱き上げた。突然のことに椿は戸惑ってしまう。

「き、清貴さん!足はどこも怪我をしていません!」

「すまない。でも、一刻も早くこの女の前から消えたいんだ」

そう話す清貴に姫乃は「酷いわ!」と言いながら両手で顔を覆う。しかし、清貴は冷たい目を向けたままだった。

「……姫乃、お前には「高校の時の同級生」という繋がりがあったから今までどんなことをされても許してきた。でも椿に怪我を負わせておいて、謝罪もなしに「何も知らない」と言い訳するなんて、もう我慢ならない。金輪際関わらないでくれ。……もし俺や椿に接触しようものなら、警察や弁護士に相談するからな」

低い声で清貴が言うと、姫乃はその場で大声を上げて泣き始めた。しかし、それを気にすることなく清貴は椿を連れて立ち去る。

(何だか、清貴さん王子様みたい……)
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