蜜月溺愛心中
「ここ、ですか?」

椿はポカンと口を開け、目の前にそびえ立つマンションを見上げる。空に届いてしまいそうなほど高いマンションだ。椿が梓たちと暮らしていた家もそれなりに大きかったのだが、緊張してしまう。

「ここで暮らすんだから、そこまで緊張しなくてもいい。さあ行こう」

清貴に手を引かれ、椿はマンションの中へと入る。オートロック製のセキュリティー万全のマンションのエレベーターに乗り、清貴は迷うことなく最上階のボタンを押した。

(こういうマンションの最上階ってすごく高いんじゃ……)

エレベーターに乗って数秒後、最上階に到着する。最上階の角部屋が夫となった清貴の住んでいる部屋だった。

「お、お邪魔します」

清貴に椿が頭を下げながら言うと、清貴は呆れた様子で「ただいま、だろ?」と言う。これからここで暮らすのだ。椿は慌てて言う。

「ただいま、です」

「おかえり」

清貴に案内されてリビングに入ると、椿は「わぁ……!」と声を漏らしてしまった。シンプルなデザインの家具で統一された広いリビングの窓からは、高層ビルなどの建物の群れが見え、美しい夜景が広がり始めていた。
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