蜜月溺愛心中
相手を鋭く睨み付けたまま清貴が言うと、男性の一人が椿の左手に目を向ける。そして、舌打ちをして椿の肩に置いていた手を離し、「行こうぜ」ともう一人に声をかけ、去って行った。椿の体は力を失い、その場に座り込んでしまう。

「椿!!」

清貴が駆け寄り、椿に触れる。先ほどの男性二人とは違う優しい手つきだ。その温もりに椿の胸が一瞬にして温かくなり、気が付けば椿は泣きながら清貴の胸に顔を埋めていた。

「……嫌でした。清貴さんと姫乃さんを見るのが。モヤモヤします。すごく、胸が苦しくて痛いです」

素直に気持ちを吐露すると、清貴が「すまない」と言い、椿の頭に触れる。優しく頭を撫でられながら、清貴の言葉を椿は聞いた。

「異性との交際経験がないと言えば嘘になる。でも、俺は姫乃と付き合ったことは一度もないんだ。図書室で勉強を教えたのは、俺が勉強しているところにあいつがしつこく「教えて」と言ったからで、俺の意思じゃない。それに、俺はその気がない女性や、体調が悪い女性に対して、そういった行為を強要するようなことはしたことがない。……どうか、俺のことを信じてほしい」
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