蜜月溺愛心中
「はい。とても楽しみです」

椿はスマホの電源を入れ、何度も検索した言葉をタップする。椿のスマホ画面いっぱいに京都の有名な観光地の一つである清水寺の姿が映り、それを見て椿はまた胸を弾ませた。

椿と清貴は今、京都に向かっている。ただ遊びに行くのではない。新婚旅行だ。

水族館でのデートの帰り道、清貴に旅行に誘われた後、二人は話し合って行き先や日程などを決め、有給の申請をそれぞれしたのである。

学校に通っていれば、行事として欠かせないのが修学旅行である。友達との初めての旅行に多くの学生が楽しむ行事だが、椿は一度も修学旅行に参加したことはなかった。理由は智也と由起子に「行くな」と言われていたためである。

『お前がフラフラと遊んでいる間、家のことは誰がするんだ?遊びに行く暇があるなら家事をしていた方が大人になった時に役立つだろう』

『修学旅行に行くというなら、この家から追い出すわよ。あんたが旅行に行くなんて贅沢にも程があるわ。金の無駄よ、無駄』

そう言われ続け、泣く泣く椿は修学旅行を諦めたのだ。修学旅行が終わった翌週、クラスメートたちが楽しそうに旅行のことを話していたのが、ただ羨ましかった。
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