ささやきを僕に
耳慣れた正午を知らせる鐘が鳴った。授業も残り20分。少し早口になる先生に必死にノートをとる。やっと今日の範囲が終わると思ったところで授業終了のチャイムがなり、残りは課題となる。いつもの出来事、いつものため息、変わらない風景が繰り返す毎日。
さっきの授業の重々しい雰囲気は部活の時間になると
幻だったかのように消えてなくなる。その雰囲気をよそ目にいそいそと帰る。部活に入る規則もないし、そんな時間僕には必要ない。16時30分までに帰らないとバイトの時間に間に合わない。
「ただいま...」薄暗いアパートの鍵は開いていた。
「あら?おかえりぃ〜」 母が妙に明るい声で言った。また男か。新しい男が出来ると決まって僕に優しくなる。そして、その男のストレスのはけ口とされるのは毎回僕だ。一週間も経てば僕と何年も一緒に住んでいたかのように馴れ馴れしくなる。勝手に距離を縮めてきたかと思えば罵詈暴言を吐き、手をあげる。男の酒焼けした妙に高いせせら笑いに気づいてやっと身体を持ち上げる。早くこの場を離れないとバイトに間に合わないと自分に言い聞かせて顔を水で洗って殴られた後が残らないか確認してから家を出た。「お疲れ様!」といつもの